形容詞から程度副詞に転成した場合、その意味変化の過程で、何が消えて、何が残っているのか、そして新しいものの何が出てくるのか、まだ解明されていない問題である。本稿では、その意味変化のメカニズムの解明の第一歩として、どのようなものであるのかを検討したいと考える。「えらい」「どえらい」「すごい」「ものすごい」この四つの形容詞を考察の対象として、用例は日本国立国語研究所が提供している「形容詞用例データベース」を使った。その意味的特徴の変化は次のようにまとめられる。 1.「えらい」が「えらく」に転成した場合、「えらい」が持っている「優越性」と「困難性」は変化して、「程度性」は残っていることになる。 2.「どえらい」が「どえらく」に転成した場合、「どえらい」が持っている「優越性」と「困難性」は変化して、「程度性」と「多数性」は残っていることになる。 3.「すごい」が「すごく」に転成した場合、「すごい」が持っている「優越性」と「恐怖性」は変化して、「程度性」と「多数性」は残っていることになる。また「評価的程度性」と「数量的程度性」に分けられるが、「数量的程度性」は「多い」の方だけに使われる。 4.「ものすごい」が「ものすごく」に転成した場合、「ものすごい」が持っている「優越性」と「恐怖性」は変化して、「程度性」と「多数性」は残っていることになる。また「評価的程度性」と「数量的程度性」に分けられるが、「数量的程度性」は「多い」の方に傾いている。 |