本研究は初級日本語学習者が利用した学習ストラテジーにどのような特徴があるのかを分析したものである。これまでの研究では、アンケート調査を通して日本語学習者による学習ストラテジーの運用を検討する研究が多く見られるが、本研究ではインタビューを通じた回想法の調査を行い、初級日本語学習者によるストラテジー運用の個人間の異同及びその特徴を考察した。協力者は、同じ授業を履修した成績上位と成績下位の学習者の各3名ずつ、計6名である。分析の結果は以下のようにまとめることができる。(1)成績順位の上下に関わらず、言語知識側面の学習においては、片仮名の学習などの共通する困難点が現れた。(2)日本語との接触において、成績上位群は記憶ストラテジーの利用以外に、社会的ストラテジーや補償ストラテジーのような他のストラテジーも駆使していた。(3)成績上位群にはメタ認知ストラテジーを利用した「マクロ的学習目標」の設定が見られた。 |