「非常に」と「大変」(「大変に」も)はいつも日本語の程度副詞として一緒に取り上げられるが、これまでの研究成果と言えば、用例を取り上げて母語話者としての内省にたよる検討が多かったようである。先行研究を踏まえて、本稿では、これまであまり触れられなかったことを中心に、「非常に」と「大変」がかかわるもの、例えば副詞、名詞の用例、否定表現の用例、それから使われる文の特徴など、「非常に」と「大変」の異同を検討した。用例について、新潮文庫の100冊(翻訳の作品を除く)とインターネット(http://languagecraft.jp/kwic/)で検索して集めた用例を用いる。 (1)「非常に」の用例と同じように、「大変」がかかわっている副詞についても、「よく」というものが数多く出ている。それから、この場合、主な述語になるものは動詞しか見られない。 (2)「大変」は形容詞としての用法もあって、「非常に」「とても」「結構」「かなり」「なかなか」のような他の副詞を受けて修飾されることもある。「非常に」の方はこのような用例は見当たらない。 (3)「非常に」は「うそつき」「美人」「体の運動」「太っ腹」「お買い得」「福音」などのようなある状態性か情態性を有している名詞にかかわっていることもある。「大変」は「廻り道」「大廻り」「教訓」「ため」「小食」「評判」「ショック」などの名詞にかかわっているが、ほとんど「名詞になる」という形を取っている。 (4)「非常に」と「大変」は同じように「動詞+ない」にかかわっている用例と、「不」が使われている言葉にかかわっている用例もある。 (5)文末に用いられて、何かのことに対して、あるいは直面している状況に対して、述語になる形容詞、動詞にかかわってある判断か評価か思いを表現しているところに「非常に」と「大変」は特徴的に使われている。 |