日本語のオノマトペは、表現を豊かにできる便利な言葉であり、その種類は多く、出現頻度も高い。しかし、他の言語に翻訳しようとすると、当該言語に目的言語のオノマトペが少ないことや、日本語のオノマトペの意味が細分化していることから、適切な訳語が見つからないなど、訳者を困らせることが多い。したがって、本稿は、豊かな表現力を持つ語群として日本語に豊富に存在し、日常生活において多用されるオノマトペに焦点を絞る。とくに擬音語・擬態語の分類で最も多く見られる「さくさく」や「もちもち」など、繰り返しの「ABAB」型と呼ばれる典型的なオノマトペを対象に、中国語で記された資料間での訳語の比較と翻訳方法を検討してみるものである。具体的には、プラス評価を表す食感表現の「ABAB」型オノマトペの中国語訳の種類と訳語を調査・比較し、翻訳方法と訳語の特徴をまとめる。本稿の成果が、今後の日中翻訳の研究資料として役立つものとなり、教材作成のリソースとして利用され、学習や指導の一助となれば幸いである。 |