ジェンダー研究において、男性に一方的に虐げられている社会的存在としてではなく、むしろ女性をより能動的・戦略的な意思決定能力及び実行能力を持つ社会的行為者(social actor)として見なす観点から、女性の社会的・経済的行為が論じられることが多くなってきた。しかし、このような見方は楽天的であると思われる。なぜなら、彼らが生まれ育った環境により、彼ら自身の能動的・戦略的思考や行為が制限されるのがその理由である。 台湾原住民社会は、伝統的な言語や慣習など、主流社会とは異なる独特の社会構造を保持してきた一方で、グローバル化を始めとする現代化が彼らの社会にも浸透した結果、彼らの社会における構造も変化している。しかし、未だに女性の多くは、男性と比較して就職や家事などにおいて、伝統的な役割を未だに担わされ続けているのである。本論文では、台湾の山岳地帯に住む原住民族の中でも、原住民女性を研究事例として取り上げながら、現代化が全ての女性を能動的な存在へと変えているわけではなく、むしろ彼らの自発的な行為を制限していることを明らかにしていく。 |