芥川龍之介の短編小説「雛」には、三つの異なる種類の<燈火>が登場する。この小説の中に登場する<無尽燈><ランプ><行燈>には、それぞれどんな意味があるのかを考察した。これらの<燈火>はこれまで指摘されてきたような旧態と近代の対照を表しているのみならず、時間の移り変わり、登場人物の特性、印象的な場面描写、父親の外面と内面、両親と子供の間のギャップなどをも表している。「雛」のテキスト本文、また芥川の他の作品や、彼が影響を受けたとされている作品に使われている<燈火>の使われ方を手掛かりにして、<燈火>によってもたらされた小説中の効果について考察した。 |