「すごく」と「ひどく」について、飛田.片山らの指摘によると、(1)程度のはなはだしいことを表す(2)よく話し言葉として使われるなどの共通点と、(3)「すごく」は量が多いことも表す(4)「ひどく」は動作の激しさの程度を表すことが多いことなどの相違点もある。本稿ではこれらの分析を手がかりに、実例の観察を通して、用法の違いを考えていくとする。実例は新潮文庫の100 冊CD-ROM とhttp://languagecraft.jp/kwic/(2010 年12 月9日アクセス)で集めた用例を用いる。 実例の観察を通して、次のような特徴が見られる。 1.「すごく」はよく文末の主節に使われて、ある気持ちや思いを示している。「ひどく」は目で見たもの、感じたこなどをそのまま表現している。距離を置いて描写しているというようなものが多い。 2.「すごく」と共起する他の程度副詞について、比較的に少ないのに対して、「ひどく」は一般に比較系の程度副詞とされているものが多いようである。 3.共起する名詞について、「すごく」と「ひどく」は共通して人間の何らかの特色をいうものが見られる。しかし、この場合、「すごく」は「すごい」と同じような働きをしているのに対して、「ひどく」は程度の感覚が薄れて、「悪い」を言うようになる。 以上で「すごく」と「ひどく」についての用法の違いははっきり見られた。「えらく」「いちじるしく」「いたく」などとの比較対照は次の課題とし、程度副詞の全貌を考えるとき、有用な手がかりにもなると思われる。 |