近年、少子化問題は世界の先進諸国及び新興国の重要な課題となっている上、さらに、若い人口が徐々に老化することに伴い、各国の産業界は生產労働力不足の問題に直面にする。そのため、高齢労働力を活用し、高齢者の定年年齢を延長することあるいは定年後の再雇用という政策は既に各国の共通認識として取り組まなくてはならい課題となっている。特に日本は高齢化率(総人口に対する65歳以上人口の割合)が世界中で極めて高い(2011年は23.1%)のため、特に団塊世代の大量定年と少子化という2つの原因から、労働力が次第に不足して来ている。日本社会は高齢者の労働力を活用しなければならない。日本政府はこうした少子超高齢化社会の厳しい状況を対応するために、実は1973年から一連の法律変革が行われてきた。高齡者の再就業と定年延長制度を長期計画をもって改正高年齢雇用安定法の中で階段的に実施し、高齢者雇用に関する法律条文を改正し、高齢者雇用確保措置を義務化させ、定年年齢を階段的に引き上げるように企業側に要請してきた。 一方で、現代社会はそれまでの近代化社会が経験したことのない新たな社会的・経済的危機に直面している。それまでなるべく社会を平等にすることや貧窮者や老人など社会的弱者の救済を目的としたセーフティーネットが崩壊し始め、加えて地球規模での人的危機や自然災害が現代人の生活に大きな影響を及ぼしている。例えば、リーマン・ショックや欧州金融不安などの人的危機や、東日本大震災や異常気象など自然災害が、個人だけではなく、多くの組織体や集合体-企業や団体など-を苦しめている。故に企業の側も、高齢者の意向に沿った形での雇用実施は簡単なことではない。 本論文では、近年社会・文化理論で議論がなされている「リスク」という概念を使って、高齢者・企業それぞれが高齢者の雇用についてどの様な考えを持ち、行動しているのか明らかにする。 |