儒教倫理が東アジア諸国に深く影響を与えた為、敬老精神の実践などは当たり前だと視されていた。しかし、近代化とともに台湾と日本における伝統的な文化精神の存続が大きな問題となった。すなわち、高齢化率が高い台湾社会と日本社会において、担い手となる若者がどのような価値意識を持つかが社会全体に大きな影響を与えると考えられる。いったい台日大学生の老人意識にはどのような変化があるのか。 本稿では過去の生活経験(祖父母との同居の有無)、敬老意識と祖父母との関係を三つの説明変数とし、台湾と日本における大学生の実証的な調査結果を用い、台日大学生の老人意識を明らかにした。結果は以下のようである。①国別にみた大学生の老人意識には顕著な差異が見られた。台湾の大学生は日本の大学生よりステレオタイプ老人意識を強く持っているだけでなく、更に彼らも高齢者に対する見方は否定的である。②台湾では「祖父母との関係」は老人意識との相関が最も高いのに対して、日本では「祖父母との関係」以外、「敬老意識」のほうも老人意識との相関がやや高い。③理想的な生き方といえば、台湾の大学生は過去の「余生安楽型」から「余生就労型」へと変化してきている一方、日本の大学生は「仕事第一型」から「余生安楽型」へと変化してきていることがわかった。④高齢者に対する評価と高齢者をめぐる社会環境を問わず、いずれも台湾より日本のほうが肯定的である。これは、台湾政府が有効的な高齢者政策を打ち出し、一刻も早く解決しなければならない課題だということを示唆していると考えられる。 |