日本は日清戦争の勝利によって台湾を清朝中国から割譲され、台湾を植民地として統治を開始する。その半世紀に及ぶ台湾支配は行政的に確立した組織でおこなわれたとされるが、台湾総督府の下に組織された各地方行政組織では、植民地統治をどのように推し進めたのであろうか。本稿では、『台湾総督府公文類纂』や『台湾総督府報』、『台湾総督府職員録』など台湾総督府の公式文書を基礎資料として、宜蘭地方の衛生医療機関の開設を分析する。四方を山と海に囲まれ、地理的に孤立した宜蘭地方を統治するために、台湾総督府が実施したインフラ整備のうち、最も重要である衛生医療機関の整備に着目し、この分野における台湾総督府の台湾人の登用について考察する。 |