聴解能力の向上はJFLの教師及び学生にとって共に重要な課題である。M大学応用日本語学科3年生の聴解授業は必修科目から選択科目に変わってから、第2学期の選択履修者数が減り、開講できない状況が2年間続いた。低学年の1、2年生より3年生に聴解能力のばらつきが大きいため、全員に興味を持ってもらえる適切な教材が選びにくいこと、学生の間で聴解練習に関する学習動機に開きがあり、大半の学生は授業以外で聴解練習に費やす時間が少ないこと、さらに、聴解能力の弱い学習者は、聴解に関する良い学習ストラテジーを習得できておらず、なかなか再度自信を持ち、聴解練習にチャレンジしないこと、といった問題点が挙げられる。 本研究は、以上の問題点を解決するため、筆者が試行錯誤を重ねつつ、台湾の日本語学科の学生向けに適切な聴解授業の教材選びを通して、学習効果の向上に繋けるための実践研究である。教材選びに工夫し、進め方を調整した結果、第2学期の履修者数はやっと開講基準に達することができた。このことから、学生がこの授業の履修が自身の聴解能力向上につながると考え、勇気を持って聴解練習にチャレンジをするようになったことがうかがえる。教師の観察、模試問題の成績及び学期末のアンケート調査の結果から、選んだ複数教材の使用により、学生の聴解能力の向上に効果が得られたと考える。今後は本研究で得られた情報をもとに、聴解授業のあり方について研究を重ねたいと思う。 |