本論文の主な目的は、食べ物に関する日本語の諺を例として、諺の意味を考察することにある。 諺は、定形句の一種である。定形句は人々が社会生活を営んでいく中で、色々な生活場面や状況に対処していくためのことばとして、自然のうちに生み出され、かつ伝承されてきたものである。食物語彙を含む、日本語の諺には、「米」、「餅」、「食う」、「酒」、「味噌」などの語彙がよく見られる。 諺は、引用文並みのものであり、その語彙構造の入れ替えが、許されないことである。仮に語彙の入れ替えが出来てもごく一部に限られたもので、そのバリエーションとして見てよい。また、少数ながら、全く反対な意味を持つ諺も存在する。それは、諺の反義句といえよう。それに多義性を持つ諺も少なくないのである。 意味論から見れば、諺の意味は、三種類に分けることができる。一つ目は、字面が示す通り、本義のみ使われるものである。二つ目は、派生義のみ使われるものである。三つ目は、本義・派生義両方とも使われるものである。 諺の意味についていえば、表層意味と深層意味との二種類が考えられる。表層意味とは、字面通りの意味である。深層意味は諺が派生義で使われる時の意味である。第二のタイプの、食物語彙を含む諺には、その食物語彙自身の意味がなくなっていることが蜆察できる。 |