| 英文摘要 |
過去数十年の間に、労働世界のグローバル化のペースが加速したことによって、雇用状況の急速な変化が生じつつある。長らく日本社会を支えていた日本的雇用慣行は外からのグローバリズムという要因によって、これまでの制度のままでは立ち行かなくなったのである。雇用形態の変化とは、非正規労働者の急増をはじめとする雇用形態の多様化のことである。若年フリーター、ニート、ワーキングプア、外国人労働、ワーク・ライフ・バランスなどをめぐって、深刻な社会格差問題が国民に意識されるに至っている。2009年総務省「労働力調査」によれば、1月から3月までのあいだに、会社や団体等に雇われている労働者は約5,086万人なのだが、そのうち約1,699万人が非正規雇用者となっている。つまり、雇用者全体の3分の]が非正規雇用なのである。景気の回復が続いているにも関わらず、正規雇用は減少し、非正規雇用が増加する動きが続いているために、日本における雇用形態の多様化が顕在化してきているのである。 本稿は、グローバル化のもとで多様化しつつある日本の雇用形態の現状とその背景、およびその問題点について、まず労働者と企業の視点から分析し、さらに非正規雇用をめぐる政府の対応政策を検討する。日本の雇用問題と諸政策の検討を通して、すべての働く人々がその雇用形態の如何にかかわらず、人間の尊厳を尊重し、能力を発揮し、公正な処遇を受ける社会の実現のための支援策について考察した上で、台湾への示唆を提示したいと考えている。 |