日本や台湾は、少子高齢化社会に入って久しい。人手不足という背景もあり、若年層の間においては、高い就職率が続いている。また、完全失業者数も2019 年の時点において減少している。しかし一方で、ニートと言われる社会層に留めおかれた人々が未だに多数存在するという問題も忘れてはならない。つまり、社会的経済的変化による恩恵を受ける人々がいる一方で、安定した就業ができないという人々も存在することを意味する。これは、教育終了後に就職をし、退職するまで同一の会社で勤め上げるという、これまでのライフコースが変化ないし崩壊したことと関連があるものと思われる。そこで本論文においては、ベックによる再帰的近代における個人化という理論的枠組みを使い、なぜニートが生まれたのかを明らかにしていく。同時に、再帰的近代と個人化という理論には疑問点がある。この理論は主にヨーロッパにおいて構築されたものであることから、東アジア圏にそのままあてはめることができるのか、という疑問である。このような背景から、台湾と日本を事例として取り上げ、双方におけるニート発生の背景を明らかにすることで、ベックの再帰的近代と個人化理論をどの程度適用できるのかを検証する。 |