近年、中国からの訪日観光客が激増しており、そのインパクトは日本の景気や社会にも及んでいる。一方、逆方向である日本人国別出国者数を見た場合、日本人観光客が一番多く訪れる観光地も、韓国と並び、中国である。多くの世界遺産や文化資産を有し、日本からの飛行時間も比較的短く、旅行費用も値ごろ感がある中国は、日本人観光客にとって魅力的なスポットの一つなのである。本稿は、日本と急速に経済的な関係を深化させているその一方で二国間懸案事項も少なくない中国に焦点を当て、訪中日本人観光客数の動向に関し考察を行う。「期待- 非確認モデル」を基に、訪中日本人観光客の動向が「正の不確認」傾向を顕著に表していることが示された。また、訪中日本人観光客は、現地のホスピタリティーに対する満足度が比較的低く、訪問者数と国民感情が相対関係をなし、訪問先のホスピタリティー、雰囲気などの心理的要因に敏感であることが明らかになった。これは、円高などの機能的諸要因により影響を受けやすい訪日中国人観光客数と対比をなす。 |