慣用表現「気が付く」と一語化された動詞「気付く」、そして動詞の名詞形「気付き」この三者間の形は似通ったものであるが、意味・機能また用法について共通点や相違点があるかどうかが問題である。研究方法としては「現代日本語書き言葉均衡コーパス」を利用して、用例を採集し、それぞれの意味、機能、使い方について比較対照してみる。 考察の結果、慣用表現「気が付く」は四つの意味として使われる。(1)あることについて他人から教えられず、そのことに考えが及ぶ。否定形が用いられることがよくある。(2)細かなところによく注意が行き届く。程度の大きいことを示す場合は副詞とともによく使われる。(3)失神や眠りなどから正気に戻る。意識を取り戻す。(4)あることに没頭して、ふとそこから周囲に目をやり、どういう状況か知る。 一方、一語化された動詞「気付く」は、「気が付く」の(1)(3)(4)の意味をもっているが、(2)の意味はもっていない。その代り、「自らが特定の病状である、あるいは特定の場所にいると知覚する」、つまり「発見する」「直感的に把握する」という意味をもっている。 名詞形の「気付き」は気がつくこと、心付くことの意味であるが、それまで見落としていたことや問題点に気付くこととして使われることが多い。教育上やビジネスにおいて、専門用語としてよく用いられる。形が近い「気付」はその人の住所でなく、立ち寄り先などにあてて手紙を送る時などの断り書き」という意味である。手紙などの表書きの住所の次に記載する。ビジネスの場では慣用的である。 |