近年の自由主義の流れを汲む市場経済が浸透した結果、社会・経済的に不安定な地位に陥り、その不安定な環境から抜け出せなくなっている層が出現してきた。例えば、日本のように多くの企業が、新卒者を採用するのが主流という労働市場の中で、その主流から外れてしまうと、安定した職に就くのが困難になる。特に、1990年代の不況以来、多くの日本の若者が、安定した職に就く為の機会を失った。彼らは、「フリーター」と呼ばれ、深刻な社会問題の一つとなっている。 我々は、「フリーター」という言葉をごく自然に且つ無抵抗に受け入れているが、この言葉はどのようにして生まれ、そしてどのようにして個人や多くの個人から成る社会に認識され、受け入れられていったのであろうか。そこで、この疑問に答える必要がある。この疑問を明らかにする為に、本論文は社会構造の変化とディスコース(Discourse)という二つの社会理論を用いる。本論文の前半では、産業の国民国家を超えたグローバルな進化・発展による社会構造の変化と個人の価値観や思考、そして行為との関係をまずは明らかにした後で、日本においてフリーターと呼ばれる社会層が生まれた背景を明らかにする。後半では、具体的にフリーターの抱える諸問題について明らかにした後、今後の対応策について論じていく。 |