本稿の目的は、「脅威の均衡」論の槻点から、米中関係を検討することである。分析にあたり、中国の安全保障上、重要な位置を占めている「台湾問題」と「アメリカの覇権」それぞれに対して、中国が抱く脅威が軽減される過程に注目した。 現在、中国がアメリカの一極体制を受け入れ、均衡行動を起こさないのは、アメリカの覇権を脅威と認識していないためであるといわれている。しかし、実際は、中国の安全保障上、台湾への武器売却および日米同盟の再定義は依然として酋威であり矛盾している。そしてその上で、背威に対する均衡行動が見られない現象が生じているのである。 検討の結果、中国が均衡行動をとらない理由として、アメリカの自重的な覇権が強く影響していることが言える。アメリカは、台湾の独立志向を牽制し、中台関係における仲介者としての存在感を示そうとしている。また、日米同盟の対日抑制の役割を強調して、中国側の懸念の緩和を図っている。結果、中国側の脅威は軽減され、米中関係の安定化が維持されている。 |