今や世界の刑法学では、運転補助を含む自動車の「自動運転」の開発とその実用化を目の当たりにして、「自動運転」に関わる自然人の刑事責任に始まり、完全な自動運転の実用化を想定した、自動運転を司るAI(Artificial Intelligence)の刑事責任の可能性に至るまで、活発な議論が展開されている1。そこでは、一方において、完全な「自動運転」において人の死傷事故が生じた場合に、自動運転車(Automatic driving Vehicle 以下、「AV」と記す。)を制御しているAI――または電子人格(Digital Person)――に刑事責任を認めることができるか否かが、「伝統的な刑法学」を動揺させる問題として議論されており2、他方において、運転補助としてのAV の活用に際して人を死傷させる事故が生じた場合に、運転者をはじめとして自動運転に関わる様々な自然人の刑事責任が論じられている。 |