日本の工芸の産地の一つである北陸やその中心地である金沢で実施した展覧会や国際展など、工芸の取り組みを踏まえて、そこから見えてくる工芸の現状や将来像、あるいは可能性についてお話をしたい。また、何が今日の課題なのかを考える上で、それの前段として現在日本の工芸状況とそこで見ることができる工芸のタイプについてもまとめた。筆者は金沢21世紀美術館という現代美術館に2007年から2017年まで在籍し、その間に北陸を中心にさまざまな工芸作家、研究者らと交流してきた。また、自らがキュレーター、プロデューサーとなって、工芸の展覧会、国際展、シンポジウム、研究会などを主催し、一美術館の研究者という枠を超えて、館の内外で広く工芸振興に携わってきた。それらの活動を通じて見えてきた工芸は、時代の中で変化し、広がり、展開する生き物のような姿をした工芸であった。生成するもの、休止するものと新陳代謝を繰り返しつつも古いものと新しいものが渾然一体となって存在する森のような姿が工芸であった。日本の工芸の現在の課題を整理し、実施施策についても述べている。 |