台湾では日本語による韻文の創作活動が見られる。短歌、俳句、川柳などの創作活動が行われている。「台湾歌壇」は日本語で短歌を創作する活動を行っている。歌人大岡信により日本へ紹介され、1994年に日本で出版された『台湾万葉集』によって、注目されるようになった。その後、日台における「台湾歌壇」の歌への考察は、日本語世代の人々の日本語への郷愁、「皇民化」を行った日本時代に対するアンビバレントな感情を詠んでいるものという切り口から捉えるものが多い。 だが、「短歌」は日本語を用いた文芸である。「台湾歌壇」という場所で生み出された「短歌」を日本語世代、皇民化という視点のみでバイアスをかけ、歌を鑑賞することには疑問を感じる。ここで読まれた歌は、台湾における漢詩を含む韻文受容史、日本文学受容史のなかに位置付け、「短歌」として読みなおす必要がある。同時に台湾の文学史の中に文芸として位置づけなおす必要があるのではないか。これは「台湾歌壇」で歌を詠む人の文学的背景とテーマを考えることによって、台湾での短歌の位置づけを考える手がかりとなる。 |