なぜ世界の消費者、特に臺灣の哈日族1は日本の商品が好きなのか。この素樸な質問に対しては、技術力や品質といった伝統的な解釈はやはり限界がある。ここでは、トヨタ自動車やパナソニックなどのメーカーを念頭に置いた日本企業論の価値を否定するわけではないが、そればかりでは、日本企業の全體像を見誤ることになりかねない。日本企業の最先端技術は今でも世界のリーダーであるが、世の中にほとんど差別化のないものが溢れ、コモディティ化と呼ばれる現象が起きるようになった。また、技術のデジタル化と製品構造のモジュラー化2はコモディティ化の流れを加速させている3。コモディティ化市場において、他國の企業が真似しにくい経営資源は何か。日本政府は観光立國の政策を打ち出し、2008年10月1 日に観光庁が発足したが、「和」の心はどのように世界の消費者に響くのであろうか。ここではソフト・パワーが日本企業の獨自能力ではないかという論説を主眼とする。 |