世界文化社が刊行した日本歴史シリーズ第21巻『太平洋戦爭』には、昭和15、16年(1940、1941)に売り出された記念煙草のケースの寫真が十六式収録されている。中でも本稿で取り上げる課題である「日本建國史観」と関わりのあるのは、戦時中日本本土の専売局(以下、専売局と略記する)が発売した(6)「朝日」(寫真〈一〉)と(7)「ひかり」(寫真〈二〉)の二式である。前者は、富士山を背景とした桜花爛漫の景色に朝日が空高く輝いている構図であり、後者は、東アジアが所屬する北半球を背景に據え、兜を被り、鎧をまとい、腰に刀を差し、左手に「日章旗」をひらめかした槍を持って臺灣東岸の西太平洋に直立した武士の姿が描かれているものである。この両者に共通しているデザインは、ケースの右側に印刷された「紀元二千六百年」という文字である。 |