はじめて留学生教育に携わったのは、日本の大学で留学生対象の日本事情、日本の歴史に関わる講義を担当した、今から凡そ15年ほど前のことである。それまで主として史学科専門科目や一般教養科目等の日本史関連科目を担当してはいたが、中等教育においていわゆる「国史」としての日本史を学んでいない学生のみを対象に日本史や日本文化を講義するのは初めてであった。アジア系の留学生が多かったこともあり、彼ら/彼女らが「日本の歴史」、とくに近現代史に関心を持っているだろうことには留意していたが、そもそも「日本語教育」との架橋ということはほとんど考慮の範囲外、というか、関心外の事柄であったことを正直に吐露しておきたい。 |