本稿においては、日本の特許審判・審決取消訴訟の対審構造性について論ずるが、重要関連論点である審決取消訴訟の紛争解決実効性についても併せて論ずる。本稿においては、私権(特許権)をめぐる私人(無効審判請求人)と私人(無効審判被請求人=特許権者)が手続当事者とされている手続構造をもって対審構造ということとする。したがって、この意味では、日本の無効審判も、無効審判の審決取消訴訟も対審構造であるが、義務付け訴訟は対審構造ではない。義務付け訴訟では被告が行政庁が属する権利主体となるが、取消訴訟では、被告が私人となることも立法政策としてあり得る。この関係では、取消訴訟では対審構造が可能となるが、義務付け訴訟では対審構造は困難である。このように対審構造が可能となるためには、取消訴訟とならなければならず、また、取消訴訟という法制度が法制度として成り立つためには、取消訴訟が十分な紛争解決実効性を有することが不可欠の大前提となる。取消訴訟の紛争解決実効性については、審決取消判決の拘束力等の点が鍵となる。