一九八七年に赤と緑の表紙で上下巻が出版された『ノルウェイの森』は、四百萬部のベストセラーとなり、二〇〇四年にやはり赤と緑の表紙で文庫化され、それぞれ四〇刷を越え一千萬部に達している。海外でも多くの言語に翻訳され、世界的ベストセラー小説になっていると言っても過言ではない。さらに映畫化されることによって、「一〇〇パーセントの戀愛小説」という出版時の広告コピーは、もはや神話化されてしまっている。『ノルウェイの森』がまだベストセラー記録を更新している頃、上野千鶴子、小倉千加子、富岡多恵子の三氏による『男流文學論』(築摩書房、一九九二)の討論が始まり、一年後に出版された。その中で『ノルウェイの森』における「女性嫌悪」を指摘したのは、小倉氏であった。小倉氏の發言を引用する。 |