文章の學習においては、「書くことと思考の関係」と「書くこととコミュニケーションの関係」とは重要な視點である。しかし、これまでの日本の學校教育の作文授業の現場では、これらの要素を重視した具體的な実踐はほとんど行われていないのが現狀である。三森(1996)によれば、ドイツでは母語教育が「言語技術」と「読書技術」に大別され、どちらも議論と作文が重要な位置を占めているという。アメリカの教育の中で批判的思考が言われるようになったのは1930年代後半だという(市川2001)。それ以後、アメリカの學校教育では批判的思考・論理的思考の育成に重點がおかれ、作文(母語)教育ではその考えを効果的に表現するための論理的文章展開の型を幼い頃からしっかりと學ばせてきた。実際、筆者が數年前に視察したアメリカのニューヨークの小學校では、3年生の教室に論証型作文の論理展開がチャート図で示されたポスターが貼られていたのを見て非常に驚かされた記憶がある。 |