今年も、さる11月18日、日本の調査捕鯨船が下関港から南極海に向かったが、それを報じる新聞記事は少なく、小さかった。しかし、國內ではほとんど報じられなかった捕鯨船の出航が、世界では大きく報じられ、反発を招いていた。とくに11月24日に総選挙がおこなわれたオーストラリアでは、政治やマスコミを巻き込む騒ぎに発展していた。その背景には、日本の20年以上におよぶ調査捕鯨に対する鯨保護団體の反対運動と、今回の調査捕鯨の対象にオーストラリアでのホエール・ウォッチングの愛好家の多いザトウクジラが新たに加わったためでもある。オーストラリアでの総選挙は、11年ぶりの政権奪取を目指す野黨・労働黨の「影の內閣」の外相を務めるマクラレン氏の「監視の必要があれば、軍を派遣して追跡する」との強行発言もあってか、もちろん10年に及ぶハワード長期政権と対米追隨外交等々によつてか、政権交代が実現した。日本の調査捕鯨には常に批判がつきまとってきた。そして、対話の場としてのIWC(國際捕鯨委員會)での日本を始めとした捕鯨國に対する批判は、何世紀にも亙って捕鯨を自らの生活の糧としてきた歴史的背景を理解することもなく、また、反捕鯨國の多くが19世紀から20世紀にかけての西歐の近代機械産業の発展・展開に、大型鯨類の鯨油が機械油などの油脂製品資源として大量に消費されてきたという自らの歴史を忘れ、今日では多分に鯨肉を食べる國に対しての文化の問題として屈曲されてきているのが事実でも有る。 |