本報告では、日本における最近(約3年間)の裁判例のうち、特に注目すべきものを紹介し、簡単な分析を行う。取り上げる判決は、以下のものである。いずれも知的財産高等裁判所(以下、「知財高裁」という。)の特別部による、いわゆる大合議判決である。標準必須特許に係る権利行使に関する判決(2014年(平成26年)5月16日判決)。特許権侵害に係る損害賠償に関する判決(2013年(平成25年)2月1日判決)。プロダクト・バイ・プロセス・クレームの解釈に関する判決(2012年(平成24年)1月27日判決)。具体的検討に入る前に、知財高裁の大合議判決の制度についてコメントをしておく。知財高裁の大合議判決とは、技術系の権利に関する訴訟について5人の裁判官の合議体で審理及び裁判をするものである(民事訴訟法310条の2、特許法182条の2、実用新案法47条2項)。この制度は、知的財産関係の司法制度改正の一環として、知財高裁の発足(2005年4月)に若干先立つ2003年の法改正により、導入されたものであり、その目的は、裁判所の判断の統一にある。 |